ふるさと納税は、実質2,000円の負担をするだけで好きな自治体に寄附することができ、代わりにご当地の特産品などの御礼の品をいただける制度です。
ただ、住宅ローン控除を受けている人は、場合によってはふるさと納税をすると2,000円を超えて税負担が増えることがあります。住宅ローン控除を受けている人は、ふるさと納税の上限に注意が必要です。
住宅ローン控除の影響の前に、ふるさと納税の仕組みをきちんと理解しておきたいという方は、関連記事で詳しく書きましたので、まずはこちらからお読みください。
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ふるさと納税の上限は住宅ローンが影響する
住宅ローンがある人は所定の手続きをすれば、住宅ローンの年末残高に応じた一定金額を限度として、税金を安くすることができます。これを住宅ローン控除といいます。
住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高で計算される住宅ローン控除限度額の範囲で、まず所得税を減額します。もし所得税を全額減税しても控除限度額が残るときは、この残高で住民税を一定の限度額まで減額します。
たいていの人は、所得税または所得税+住民税の限度額の方が住宅ローン控除限度額よりも大きいので、住宅ローン控除限度額は使い切ってしまいます。
でも、ときどき住民税を限度額まで控除しても、住宅ローン控除限度額が余る人がいます。こういう人は、2,000円の自己負担で済むふるさと納税の上限が小さくなります。
ふるさと納税を住宅ローン控除と併用すると
なぜ住宅ローン控除限度額が余ると、ふるさと納税の限度額が小さくなるのでしょうか。
これを理解するために、税金の計算方法をざっくりとみておきましょう。税金の計算は4ステップでおこないます。
図1は税額計算の模式図です。
所得税も住民税も、計算の構造は同じです。所得控除、税額控除の内容や金額に若干のちがいがありますが、ここでは気にしないでけっこうです。
さて、税額の計算の4ステップは
- まず、すべての収入から収入を得るために使った支出をすべて差し引いて「所得」を算出します。
- 所得から税法で認められる「所得控除」をして「課税所得」を算出します。
- 課税所得に税率を掛けて「税額」を算出します。
- 最後に税法で認められる「税額控除」をして支払うべき税額を「確定」します。
控除は2段階になっていて、先に「所得控除」がおこなわれ「税額控除」が後になります。
「所得控除」は課税所得を減額しますが、その結果(控除額×税率)で計算される税額を減らします。後になる「税額控除」は、直接税金を減らします。
なので、どちらも税額を減らすという効果は同じです。
ふるさと納税は、所得税分が「所得控除」で住民税分が「税額控除」になります。住宅ローン控除は、所得税分も住民税分も「税額控除」になります。
ここで、先ほどの住宅ローン控除に戻ります。
住宅ローン控除限度額で住民税まで控除することになった人の税額は、図2のような計算になります。
もともとの税額は「所得税+住民税控除限度額+住民税」でしたが、住宅ローン控除限度額を減じた残りが、実際の税負担です。この例では、所得税は1円も払わなくていいようになっていますね。
ただし、住宅ローン控除の対象になる税額は控除限度額を超えています。
図3は、住宅ローン控除限度額が余っている人の模式図です。
まだ住宅ローン控除限度額が残っていますが、控除対象の税金が所得税と住民税控除限度額までなので、これ以上減らせる税金はなく「余り」のところが宙に浮いている状況です。
さて、図の2と3は、ふるさと納税をした人の所得控除前と後とみることもできます。ふるさと納税で(寄附金額-2,000円)を所得控除したら、所得税額が減って住宅ローン控除の枠が使いきれずに余ってしまった、というのが図3の状況です。
何のことはない、ふるさと納税をしたら住宅ローン控除される税額が、図3の「余り」の金額分減ってしまったのです。
このように、ふるさと納税をすると住宅ローン控除の限度額が余る人は、自己負担額が2,000円を超えることになります。
控除される税額が減ったということは、その金額だけ自己負担が増えたということです。自己負担が増えないようにするには、ふるさと納税の金額を、図2のように「住宅ローン控除対象」になる税額を「住民税控除限度額」が超えない金額に収めなければなりません。
ふるさと納税の上限の計算式は
ふるさと納税をすると、(寄附金額-2,000円)が所得控除されることで、所得税は(寄附金額-2,000円)×所得税率の金額が減額されます。
住民税は(寄附金額-2,000円)×10%(住民税の税率)の金額が「基本分」として税額控除され、さらに2つの控除で残る(寄附金額-2,000円)×(1-所得税率-10%)の金額が「特例分」として住民税から税額控除されます。
(寄附金額-2,000円)の金額は、このように所得税の所得控除と住民税の税額控除という2つの控除の合計で減税されます。
そして「特例分」の税額控除には上限があって、住民税の所得割額の20%となっています。これがふるさと納税の上限を規定する条件です。住民税の所得割額というのは、図1の税率を10%(住民税率)にして計算される金額にあたります。
自己負担が2,000円で済むふるさと納税の上限を算出する計算式は、特例分の税額控除が住民税の所得割額の20%と一致する寄附金額を求めればいいので
(寄附金額-2,000円)×(1-所得税率-10%)=(住民税の所得割額の20%)
となります。
図3の人のように住宅ローン控除限度額が余らないようにするには、ふるさと納税をしても
住宅ローン控除限度額≦(所得税+住民税控除限度額)
になる、という条件を加える必要があります。
計算式は簡単ですが、今年のふるさと納税の上限を計算するのは、所得が確定していないのでけっこう大変です。実際に住宅ローン控除枠が余ることはめったにないので、住宅ローン控除で所得税が「0」になる見込みのある人以外は2番目の式は無視してかまわないと思います。
実際にご自分のふるさと納税の上限額を計算してみたい方は、こちらの記事で詳しく計算方法を書いているので、ぜひお読みください。
関連記事>>>ふるさと納税の限度額の計算はいつの年収で?詳細な方法は?
住宅ローン控除の適用が2年目以降になると、確定申告は要件でなくなるので手続きが年末調整だけで済みます。他に確定申告をする理由がなければ、ふるさと納税をするときにワンストップ特例制度を利用すると、住宅ローン控除限度額が図3のように余っている人でも住民税額が残っている分までは2,000円の自己負担だけでふるさと納税をすることができます。
これは、ワンストップ特例制度では控除する税額が、全額住民税から引かれるからです。
ワンストップ特例制度についてもっと知りたい方は、こちらの記事で詳しく書いているのでぜひお読みください。
関連記事>>>ふるさと納税のワンストップ特例とは?流れとメリットデメリット
まとめ
住宅ローン控除を受ける人は、ふるさと納税をしても住宅ローン控除限度額が余らないようにしましょう。控除限度額が余ると、余った金額は自己負担になります。
ただし、ワンストップ特例制度を利用して確定申告をしない場合は、気にすることありません。
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