年末調整で還付金が下がったという人は
何かの間違いじゃないか!?
と思われるかもしれません。
ちゃんと計算してくれているのか、気になる人や不安がある人は自分で確認してみましょう。ここでは、年末調整が正しいかどうか、確認する方法を書いています。
年末調整の還付金が下がった!
毎年何万円か還付金があったのに、今年は◯千円しかないというときは
何かの間違いじゃないの!?
と考えてしまいがちです。
実は還付金が減るのは、けっこうあることです。でも、知人友人のところがそれほど減っていないような場合、うちの計算がホントにあっているのか、気になってしまうこともありますよね。
日本の税制は自己申告制が原則で、毎年3月15日期限の「確定申告」によって1年間の稼ぎを申告して税金を納めることになっています。税金は年に1回計算して納付します。
ただし、給与所得者(サラリーマンや公務員、アルバイトなど)は事業者(給与支給者)が代行して申告納税を行います。
事業者は1年分の所得税見込額を分割して、毎月の給与から相当額を差し引き、従業員全員の所得税をまとめて毎月税務署に収めています。これが「源泉徴収」です。
1年間で源泉徴収した所得税の過不足を最終的に計算して、給与所得者の所得税を確定するのが「年末調整」という手続きです。
毎月の天引き額はだいたいの見積もりで源泉徴収しているので、多く引かれすぎていたときには「年末調整」で還付金が発生し、不足があると「年末調整」で追加的に支払います。
暮れになると、毎年翌年の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤め先に提出しますよね。この書類に記載された内容が元になって、翌年の天引き額が決まります。
年末には、前年に出した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に変更がないかどうか、確認されると思います。このときに変更事項があると、税額が当初の見積もりと変わる可能性がでてきます。
今年になって
- 結婚したり離婚したりしませんでしたか?
- お子さんが16歳になったり19歳になったりしていませんか?
- 親と同居しはじめませんでしたか?
- ご自分や家族が障害者認定を受けたり、障害が重くなったりしていませんか?
- 妻や夫が亡くなりませんでしたか?
- 昨年から住宅ローン控除(今年は2年目)を受け始めませんでしたか?
こうしたことがあると、税額が当初の見積りからズレやすくなります。
年末調整の還付金が誤りかどうか
もし、思い当たるような生活や家族構成の変化がない場合、還付金が減るのは誤りでしょうか?
実は必ずしもそうとは言い切れません。そこで、会社から配布される「源泉徴収票」を確認してみましょう。
こんな書類だと思います。
まず、「給与所得控除後の金額」と「所得控除の額の合計額」(赤枠で囲んでいるところ)に記載があるかどうか見てください。ここに金額が書き込まれていれば、勤め先で年末調整が実施されたのは間違いありません。
次に、1年分の給与明細と賞与明細(もしあれば)から、天引きされた所得税額の合計を計算して下さい。
この計算金額が源泉徴収票の「源泉徴収税額」と一致していれば、年末調整が計算されて税額の過不足も清算されていることがわかります。
計算金額と源泉徴収税額に差額があるときでも、差額を1月給与で調整するところ、振込や現金で別途精算するところがあります。
こうした運用をしているなら、精算金額の通知があると思いますので、差額が通知されている金額と一致するなら、年末調整は正しく行なわれてお金は清算されることになります。
ただし年末調整は、あくまで計算した税額と天引きした金額との差額を清算する手続きなので、計算した税額自体に誤りがあるかどうかは、このままではわかりません。
年末調整の還付金の確認方法はどうするの?
計算した税額の確認方法は、自分で正しく税額を計算してみる必要があります。
慣れないと面倒な計算になるかもしれませんが、たぶん2時間ほど頑張ればキチンと計算できますので、勤め先の計算が信用できない人は、時間をとってみて下さい。
所得税の計算手順は以下のとおりです。
- 給与支給額から給与所得控除を差し引く ①
- 各種の所得控除を計算する ②
- ①と②の差額「課税所得金額」に所得税率を掛けて所得税額を計算する ③
- さらに復興特別所得税を③に加算する ④
①が源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄に、②が「所得控除の額の合計額」欄に対当します。③の金額の1,000円未満を切り捨てて1.021を掛けると、④になります。
④の計算値の100円未満を切り捨てると納付すべき所得税の金額になり、この金額が源泉徴収票の「源泉徴収税額」と一致すれば、勤め先の計算は正しいことになります。
「給与所得控除後の金額」の計算
給与明細と賞与明細で収入金額を計算します。収入金額に応じて、給与所得控除の金額が決まっているので、この金額を差し引きます。
給与所得控除の金額
収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40% 650,000円に満たない場合には650,000円 |
180万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
660万円超 1,000万円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
1,000万円超 | 2,200,000円(上限) |
出典:国税庁 29年4月1日現在
「所得控除の額の合計額」の計算
社会保険料、小規模企業共済等掛金、生命保険料、個人年金保険料や地震保険料の支払があれば、それぞれに応じて控除があります。
こちらの表を埋めると計算できます。
平成30年分給与所得者の保険料控除申告書
これに加えて基礎控除、配偶者がいて配偶者に課税所得がある場合は配偶者特別控除、所得がない場合は配偶者控除が、扶養家族がいれば扶養控除が受けられます。人によっては、障害者控除、寡婦(夫)控除、勤労学生控除が適用されます。
各種控除の中身はこちらでご確認下さい。
財務省:人的控除の概要(所得税)
①の計算値が源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」と、②の計算値が「所得控除の合計額」と一致していれば、ほぼ勤め先の計算が正しいことになると思います。
でも、税額まで確認したい方は③の計算もしてみて下さい。所得税率は下の表のように決められています。
所得税率の表
課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万年超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
「課税される所得金額」700万円の場合、税率は23%になります。税額の計算は
700万円×23%‐636千円=974千円
となります。
出典:国税庁 29年4月1日現在
まとめ
勤め先がしっかりしたところでも、給与計算の実務を慣れない人が担当して誤った計算をしたり、給与計算ソフトに入力ミスしたまま、年末調整されてしまう可能性はゼロではありません。
勤め先に提出する保険会社からの「保険料控除証明書」などは、会社で保管する義務があるのでご自身には返却されません。だから念のために、提出物のコピーはとっておくことをおすすめします。
年末調整の金額を間違うことは、そんなに多くはないと思いますけどね。
でも、もし勤務先の計算が間違えていることが発覚したら、ちゃんと申し出て正確な計算による所得税額の精算と、正しい源泉徴収票の再発行を依頼して下さいね。
コメント