株の損失を繰越するべきか? 確定申告前にすることと控除の仕方

株を運用していて損失が出たらどうしますか?

利益の出ている株と損益通算する。翌年以降に損失を繰越する。

どちらも節税になりますが、ときに節税効果以上にデメリットが大きいことがあります。

節税したつもりが損した。。。

ということがないように、何をみたらいいのかを知っておきましょう。

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株の損失を繰越するべきか?

株に投資している人は、投資のプロを自認する人をのぞけば、証券会社に特定口座を開いて「源泉徴収あり」を選択している人が多いと思います。

株式市場の好調が続いているので、いまは気持ちのいい投資家さんが多いでしょう。

でも、投資ですから時にはマイナスになることもありますよね。特定口座を複数もっていると、年末には損失の出ている口座があるかもしれません。将来、年間通して特定口座が赤字になることもあるでしょう。

こういうときは株式譲渡所得の確定申告をすると、複数の特定口座間の損益通算ができたり、他の株式の利益と相殺しても残る損失を翌年に繰越すことができます。

確定申告によって、損失額に見合った源泉徴収税額(所得税と復興特別所得税が15.315%、住民税が5%)が回収できるので、年末になって損失がある場合は、特定口座で源泉徴収ありの選択をしていても、確定申告して既に支払った源泉税を取り戻したくなりますね。

確定申告して戻ってくる源泉税は、「損失額×(15.315%+5%)」です。

還付請求になるので、早めに確定申告したいところですが、その前にちょっとしたことを確認しておきましょう。

株式の譲渡所得を確定申告すると、税額を計算するときの所得控除税額控除の適用の有無、適用金額などが変更されることがあります。

確定申告の対象年や、繰越控除がある時はその翌年に、住宅ローン控除配偶者控除・配偶者特別控除扶養控除勤労学生控除など適用されなくなったり、国民健康保険後期高齢者医療制度の保険料が増える、医療費の自己負担が3割に増えるといったことがおこります。

こうしたデメリットがおこったときに生じるお金の負担が、戻ってくる源泉税よりも大きくなるなら、確定申告はしない方がいいですね。

というわけで、確定申告をする前にやっておくべきことがあります。

株の損失の確定申告前にすること

確定申告をする前にすべきことは、戻ってくる源泉税額と確定申告によって増えるであろう負担金額の比較です。

戻ってくるのは「損失額×20.315%」の源泉税額です。この金額を、以下の数字と比較して下さい。

株式の譲渡所得を加えると合計所得金額3,000万円超になる人は、いわゆる住宅ローン控除がその年に受けられなくなります。該当する人は、「受けられるはずだった住宅ローン控除額」が比較対象になります。

株式の譲渡所得を加えると合計所得金額が1,000万円超になる人は、配偶者控除・配偶者特別控除が適用されません。該当する人は、「(受けられるはずだった所得税の配偶者控除・配偶者特別控除額)×所得税率×1.021+(受けられるはずだった住民税の配偶者控除・配偶者特別控除額)×10%」で計算される金額が比較対象になります。

株で損失を出した人と、デメリットを受ける人が違うこともあります。以下の3つのケースは、戻ってくる源泉税を受け取る人と、そのための負担をする人が別になります。

株式の譲渡所得を加えると合計所得金額が38万円超になる人が、扶養控除の控除対象扶養親族だったときは、その人を扶養している人が扶養控除を受けられなくなり、その負担額は「38万円×所得税率×1.021+33万円×10%」で計算される金額になります。

株式の譲渡所得を加えると合計所得金額が65万円超になる勤労学生控除を受けている人が、扶養控除の控除対象扶養親族だったときは、その人を扶養している人が扶養控除を受けられなくなり、その負担額は「38万円×所得税率×1.021+33万円×10%」または「63万円×所得税率×1.021+45万円×10%」で計算される金額になります。勤労学生控除を受けている人が19歳未満または23歳以上の場合は前の計算式、19歳以上23歳未満の場合は後の計算式があてはまります。

株式の譲渡所得を加えると合計所得金額が85万円超になる人が、配偶者特別控除の控除対象配偶者だったときは、その人の配偶者に適用される配偶者特別控除の金額が減少し、その負担額は「(所得税の配偶者特別控除の減少額)×所得税率×1.021+(住民税の配偶者特別控除減少額)×10%」で計算される金額になります。

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確定申告をすることで負担が増えるのは、税金だけではありません。

国民健康保険や後期高齢者医療制度は、株式の譲渡所得を加えると保険料の計算ベースになる総所得金額が増えます。保険料率はお住まいの都道府県によって違うのですが、だいたい増加額の10%前後は保険料の負担増となります。後期高齢者の中には「現役並み所得者」とみなされて、医療費が3割負担になる人も出てきます。

子育て世代なら、保育園の保育料高等学校の就学支援金も関係あるかもしれません。どちらも株式の譲渡所得を加えると増える世帯合計の所得が、負担額や支給額を決める指標になっています。保育料や就学支援金は、世帯所得や対象になる子供の数によって決まってくるので、居住地の自治体のウェブサイトなどを参考に、個別に負担額を計算してみて下さい。

いかがでしたか?

意外と、確定申告しないほうが有利になった人がいるかもしれません。損失金額の大小にもよるのですが、もともと株の利益にかかる税率は所得税も住民税も低めになっているので、そこそこ所得のある人が株の譲渡所得を確定申告すると、負担が大きくなる傾向があるのではないかと思います。

たびたび出てくる合計所得金額という言葉は、はじめてお目にかかった人もいるかもしれませんね。こちらの記事にくわしく書いていますので、興味のある方はぜひお読み下さい。

関連記事>>>所得税の計算方法を簡単に説明 合計所得金額と控除額の計算

株の損失の控除の仕方

ここまで読んでいただくと、株の譲渡所得は確定申告しない方が良いみたいに思えるかもしれませんね。

でも、実際に上記のことをチェックして自分がひっかからない場合は、確定申告をして損失は利益と相殺し、それでも損失が残るときは翌年に繰越をした方が得なので、とにかく一度自分の状況で確認して見て下さいね。

で、もし上のケースにひっかかった場合でも、次の方法で有利な条件を見つけられるかもしれません。

  • 特定口座は口座毎に、源泉分離課税か申告分離課税を選ぶことができます。

複数の口座をもっている場合に、損失が出ている口座の損失額よりちょっとだけ多く利益の出ている口座があるなら、その2つだけを確定申告の対象にすると、少ない株式譲渡所得で申告することができます。他の口座は源泉分離のままにしておけば、合計所得金額の増加額を少なく抑えることができます。

特定口座をひとつだけにしておけば、きちんと損益通算後に課税されて、損失が残らなければ確定申告する必要もないので、特に理由がなければ特定口座はひとつがオススメです。

  • 所得税と住民税は、課税方法を別に選ぶこともできます。

たとえば所得税では申告分離課税を選び、住民税は申告不要制度を選ぶ(特定口座で源泉分離課税を選んだままの状態)ことができます。これなら所得税分の源泉徴収税額は回収できて、国民健康保険料、後期高齢者医療制度、保育料、高等学校の就学支援金への影響は回避することができます。5%の住民税は回収できませんが、税率が10%になる住民税の総所得金額は増やさないで済みます。

大阪市のウェブサイトに

※ 納税通知書が送達される日までに、確定申告書とは別に、市民税・府民税申告書をご提出いただくことにより、所得税等と異なる課税方法(申告不要制度、総合課税、申告分離課税)を選択することができます。(例:所得税等は総合課税、個人市・府民税は申告不要制度)

と記載されています。

住民税の課税方法は、確定申告をしたあとに有利な方法を選ぶことができます。4月頃に決めて手続きをしても間に合うということですから、時間はずいぶんあります。

まとめ

株の損益は、他の所得とわけて課税されるようになっています。

例外の規定が多いので、ちょっとややこしいかもしれませんが、ゆっくりご自分のケースを当てはめて考えれば、どうしたら一番有利になるかがわかると思います。

でも損失は出さないのが、何よりです。この記事が役立つ場面にならないことを願っています!!

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