「わたしは健康保険の扶養に入れるの?」
「この仕事をはじめたら、健康保険の扶養から外れることになるの?」
結婚したり仕事をまたはじめたり、そんな人生の節目で健康保険の扶養について疑問に思うことがありますよね。
そんなときに、疑問を解消してスッキリした気持になるために読んでいただきたいと思って、健康保険の扶養の仕組みについて記事を書きました。
健康保険の扶養の条件
全国の中小企業の従業員がおもな被保険者になっている、全国健康保険協会(協会けんぽ)の被扶養者認定基準は、以下のとおりです。
協会けんぽの被扶養者認定基準
認定対象者が
- 同居している被保険者の直系尊属、配偶者(内縁関係含む)、子、孫、兄弟姉妹、配偶者の三親等内の親族で、年間収入が被保険者の年間収入の半分未満である
- 同居していない被保険者の直系尊属、配偶者(内縁関係含む)、子、孫、兄弟姉妹で、収入が被保険者からの援助額より少ない
場合のどちらかで、現在は
- 退職して無職無収入
- 配偶者等の生計維持者が退職し、又は死亡して無職無収入
- 結婚して無職無収入
- 年間収入見込額が130万円(60歳以上は180万円)未満
- その他(1~4に該当しない協会が認める事情があるとき)
のいずれかに該当する。
被扶養者認定を申請するときには、申請前に加入していた医療保険の資格喪失証明書の添付を要することがあります。認定対象者がまだ他の医療保険に加入しているときは、被扶養者資格認定後に資格喪失証明書の提出を求められることがあります。
参考>>>協会けんぽの健康保険被扶養者認定申請書
上記の認定基準では、認定対象者の収入に関する条件は2つあります。が、扶養に入れるのか、扶養から外れないといけないのか、という疑問が生まれるのは、4の収入基準があるからでしょう。
4の収入基準の詳細は、次の章でみていきます。
ところで「協会けんぽ」以外にも、医療保険はあります。大企業や企業グループ単独、あるいは業界や地域の企業が協力して運営する健康保険組合、船主が船員のために運営する船員保険、公務員や私立学校職員を被保険者とする共済組合、そして市区町村が運営して自営業者や無職の人が被保険者になる国民健康保険です。
国民健康保険以外の医療保険は、雇用主の責任において従業員を被保険者とする義務があり、被用者保険ということもあります。被用者保険の被扶養者認定基準は、健康保険法という法律に規定があって、基本的にはどこも「協会けんぽ」と同じです。
しかし、大枠は法律で決まっていますが運用の細部は条文に書いていないので、実際は組合によって認定基準が異なっています。
健康保険の扶養に入れる収入の基準
- 年間収入が被保険者の半分未満または被保険者からの援助額未満
- 年間収入見込額が130万円(60歳以上は180万円)未満
これが、被扶養者認定の収入基準です。
通勤手当が支給されているときは、通勤交通費も収入に含まれます。失業保険などの給付金がある場合は、給付金は収入とされます。退職金は一時金であれば、収入とはみなされません。
130万円のボーダーラインは、月額108,334円を目安とすることになっています。収入が給料だけの場合は、月額給与が108,334円(60歳以上は150,000円)以上のときは、被扶養者になれません。
雇用保険の基本手当日額、傷病手当日額、健康保険の傷病手当金の継続給付額を3,612円(60歳以上は5,000円)以上受給しているときは、30倍すると月額108,333円(60歳以上は150,000円)を超えてしまいます。この受給期間中は、被扶養者になれません。
認定対象者がフリーランスの仕事をしている場合、収入基準は必要経費を差し引いた残額が年間130万円未満になることです。自営業者も同様ですね。
ただ必要経費として認められる金額はかなり少なく、下記は税法上は経費として認められますが、健康保険の被扶養者認定の基準としては、通常経費として認められません。
- 接待交際費
- 福利厚生費
- 消耗品費
- 雑費
- 給料賃金
- 注工賃(給料賃金に相当する内容の場合)
- 地代家賃・通信費・修繕費
- 減価償却費
- 青色申告特別控除及び専従者給与控除、医療費控除を始めとする各種控除
- 退職引当金
収入基準の月額108,334円は、一度でも超えるとだめな組合もあれば、たまたま超えてしまったということなら認められる組合もあります。収入基準はこの先1年間の見込みなのに、目安となる月収は直近の実績を使います。ここに組合によって認定基準が異なる理由があります。
何をもって見込みが130万円未満と判断するかは、保険者に委ねられていて、組合がちがえば運用がちがうというのが現状です。
そのため被扶養者認定の可否は自己判断せず、必ず健康保険組合や共済の事務局に照会するようにしましょう。
日本の医療保険制度は国民皆保険なので、健康保険の被扶養者に認定されない人は、自分が勤め先で被用者保険に加入できなければ、市区町村が運営する国民健康保険に被保険者として加入しなければなりません。
扶養から外れると、医療保険と年金の保険料は自己負担することになります。すると、収入が増えたのに手取りが減少する「働き損」が生じます。これを俗に「130万円の壁」といいます。
健康保険の扶養から外れる条件
ところで、健康保険の扶養を外れることになるのは、収入が130万円以上になることだけが原因ではありません。
被扶養者自身が、勤め先で健康保険の被保険者になる場合も、今加入している健康保険の被扶養者からは外れることになります。あなたの勤め先が社会保険の適用事業所である場合、働き方次第では収入金額にかかわらず、あなたは勤め先で健康保険の被保険者になります。
その条件は、以下の2つのどちらかに該当する場合です。
○ 以下の5つの要件をすべて満たす
- 勤め先の従業員数が501人以上
- 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が1年以上の予定
- 学生ではない(夜間・定時制は除く)
- 月額給与88,000円以上
○ 以下の2つの要件をすべて満たす
- 1日または1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同じ業務を行っている正社員などの4分の3以上
- 契約期間が2か月を超える
複数の医療保険に加入することはできないので、勤め先の医療保険の被保険者になれば、必然的にあなたは被扶養者資格を喪失し、扶養から外れることになります。
自身が健康保険の被保険者になるのは、本来望ましいことです。
被保険者になれば傷病手当、出産手当の受給資格があり、厚生年金にも加入できます。保険料は雇用主が半額負担します。扶養に入るよりも、受けられるの経済的補償が手厚くなるし、将来の年金支給額も増えます。
ただし「130万円の壁」のような収入の壁はあります。社会保険料の半額を自己負担することになるので、どうしても働き損が生じます。扶養から外れたくない人は、収入金額が増えないようにと気を使う前に、その働き方が勤め先で社会保険加入要件に該当しないように注意する必要があります。
まとめ
扶養の認定は大枠のルールはあるものの、ルールの運用の細部は健康保険組合によってちがいがあります。扶養認定が必要になったときは、自己判断をせず必ず健康保険組合の事務局に問い合わせをして下さいね。
扶養を外れると「収入の壁」が立ちふさがります。この壁をクリアして、手取りベースでも収入増となるには、どのくらい多く稼いだらいいかについて、興味がある人はこちらの記事をぜひお読み下さい。
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