扶養を外れるとどうなる? 税金と社会保険にどんな影響があるかを解説します

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扶養を外れるとどうなるか?

家族の誰かが扶養を外れると、税金と社会保険の負担が増えて家計全体の手取り年収が減少します。

実際にどのくらいの金額が減ることになるのか、この記事では具体的な金額を試算しました。

仕事を増やしたのに家計の手取りが減る、という働き損をしたくない人は、扶養を外れない働き方をするか、扶養を外れても働き損にならないくらい収入を増やすか、どちらかを選択する必要があります。

扶養を外れるとどうなる

生きていくための生計費を主に負担して家族を養っている(扶養している)人に、国は制度面で経済的なサポートをしています。

税金面では、所得控除という枠組みの中で世帯主の税負担を軽くして、医療保険や年金面では、被扶養者認定という枠組みの中で、扶養されている人たちの保険料を免除しています。

しかし、扶養されている人がある程度以上の収入を得られるようになると、国としてサポートする必要がなくなったと見做されます。すると、それまで受けていた経済的メリットを失うため、家計全体として税金や保険料の負担が多くなり、手取り年収が減少します()。

この記事では税金と社会保険にしぼって、扶養から外れる影響を考えます。でも働き損になるのは税金と社会保険だけが理由ではありません。全体像を知りたい方は、こちらの記事から読んでもらうと理解しやすいと思います。

関連記事>>>主婦がパートで扶養を外れる前に 働き損は扶養以外にも 負担はいくら

パート・アルバイトと扶養との関係で、年収103万円、106万円、130万円、150万円という数字があげられます。103万円と150万円は税金、106万円と130万円は医療保険(健康保険)に関わるもので、年間の給料がこの金額を超えると、国のサポートが要らなくなったと判断されて、扶養を外れることになるものです。

扶養を外れると税金は増えるのか

扶養されている人が配偶者(妻か夫)か、配偶者以外かで、税金への影響は異なります。

たとえば16歳以上の子供が、パートやアルバイトで年間103万円を超える給料をもらうと、その子は扶養控除の対象者ではなくなります。

この場合、38万円の扶養控除(※1)がなくなるため、世帯主の課税所得が38万円増えて、負担する税金が多くなります。その金額は38万円×(所得税率×1.021+10%)で計算されます。所得税率は世帯主の所得金額によって決まり、10%は住民税の税率です。

扶養の対象者が妻か夫の場合、扶養控除は「配偶者控除」と呼ばれます。年間給料が103万円を超えても150万円までは、「配偶者特別控除」が「配偶者控除」と同額で世帯主に適用され、さらに150万円を超えても201万円超までは控除がなくなるわけではなく、控除額が徐々に減少します(※2)。

扶養を外れるのが妻の場合、夫の税負担の増加はゆるやかで、妻の収入増の方が大きくなるため、家計の手取り収入が減ることにはなりません。

税金だけで考えると、妻が稼ぐほど家計の手取り収入が増えます。なので103万円、150万円という金額は気にする必要はありません。問題は社会保険の方にあります。

 

配偶者控除・配偶者特別控除は平成30年から制度が改訂されました。こちらの記事にくわしく書きましたので、興味のある方はぜひお読み下さい。

関連記事>>>配偶者控除と配偶者特別控除が平成30年からかわります

合計所得金額の計算方法は、こちらの記事でくわしく書きました。興味のある方はぜひお読み下さい。

関連記事>>>所得税の計算方法を簡単に説明 合計所得金額と控除額の計算

※1 扶養控除は、対象者がその年の12月31日で19歳以上23歳未満の場合は63万円、70歳以上の場合は48万円、70歳以上で同居している両親などの場合は58万円となります。

※2 世帯主の合計所得金額が1,000万円超の場合、配偶者控除・配偶者特別控除は適用されません。所得の多い人は、もともと扶養の優遇措置を受けていないのです。

社会保険の扶養を外れると保険料はどのくらい増えるか

社会保険で扶養を外れるのは、2つのパターンがあります。俗に130万円の壁といわれるものと、106万円の壁といわれるものです。

自営業を営んでいたりして国民健康保険に加入している人には、この話は関係ありません。国民健康保険は家計全体の所得と人数で保険料が決まり、扶養の優遇措置が何もないからです。

 

では、130万円の壁の話です。

夫が教員、公務員や会社員で勤務先の社会保険に加入している場合、妻が多く働くと働き損になることがあります。

パートやアルバイトで、妻の給与収入が年間130万円以上になると見込まれると、社会保険で夫の被扶養者から外れて、妻は自分で医療保険と年金に加入する必要があります。多くの場合、住居地の市区町村で国民健康保険と国民年金に加入することになります。

何をもって年収130万円以上とするかは、社会保険の運用者によってまちまちですが、月額の収入が130万円を12で割った108,333円を超えると、被扶養者認定が取り消される可能性があります。

妻がフリーランスで仕事をしている場合、収入から経費を差し引けることもあるようですが、運用者次第なので確認が必要です。

いずれにしても、130万円以上の見込みになると、夫の扶養には入れなくなります。

夫の扶養から外れると、介護保険料も負担する40歳以上の妻が支払う国民健康保険保険料と国民年金の掛金は、年間34万円ほどになります。

【参考】H30 国民健康保険料の目安(金沢市)

金沢市が提供している、おおまかな国民健康保険料の目安です。

国民健康保険は、運営の主体が市区町村単位で、保険料の決め方もそれぞれが独自におこないます。そのため自治体によって保険料はちがいますが、桁が違うほどの差にはなりません。

一方、妻が扶養から外れても、夫の社会保険料の支払いは減りません。保険料が、毎年4-6月の給与支給額の平均を基準として、年に1回だけ決められるからです。

つまり妻が支払う34万円の保険料は、家計として純粋な負担増になります。年収129万円ならば負担は0なのに、130万円になると34万円をいきなり負担することになります。

では、130万円を超えて収入を増やすなら、手取りベースでも収入を増やすには、いくら稼いだらいいのでしょう?

上記の金沢市の保険料の目安をつかって計算すると、その損益分岐点はだいたい年収で168万円になります。パートやアルバイトではなく、イラストレーターやライターなどフリーランスの仕事をしている人でも、月の経費が2万2、3千円という場合は、損益分岐点の収入が169万円というところでそれほど差はありません。

このように年間38、9万円の収入を上乗せすると、家計の手取りを増やすことができます。月額3万2~3千円の収入増ができれば、130万円の壁を超えて手取りを増やすことができます。

 

次は、106万円の壁の話です。

2016年からパートやアルバイトで働く人が勤務先の社会保険に加入できる条件が緩和されました。

  • 会社の従業員数(被保険者)が501人以上(ただし2020年以降はこの条件は失くなる可能性がある=中小企業に勤務する方も対象になる)
  • 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上
  • 雇用期間が1年以上の予定
  • 学生以外(夜間・定時制は除く)
  • 月額給与88,000円以上(雇用契約上の金額で、残業代などがあって結果的に月額88,000円を超えるとしても、この基準には該当しない)

5つの条件すべてをクリアすると、社会保険に加入できます。社会保険の被保険者になると、別の(夫の)社会保険の被扶養者からは外れることになります。

5番目の条件、月額88,000円を年収にすると1,056,000円となるのが、106万円の壁といわれる所以ですが、基準は月額です。それに、給与が106万円を超えているだけでは、社会保険に加入できるわけではありません。

社会保険料は、同額を勤務先の会社も負担します。出産や傷病によって休職するときなど、将来の保障が夫の被扶養者でいるよりも手厚くなるので、パート先・アルバイト先で社会保険に加入できるのは基本的にはいい話です。

勤務先の社会保険に加入できれば、国民健康保険に加入する必要はないので、前述の130万円の壁もなくなります。

ただし、5つ全部を満たさないといけないので、いまのところ該当する人の数はあまり多くないでしょう。

前述のように、妻が扶養を外れても社会保険に入っている夫の負担には、変化がありません。妻には社会保険料が少なくとも月額13,000~14,000円程度で課される(加入する組合によって多少のちがいがあります)ので、家計の手取りはその分減ります。

では、どのくらいの収入になれば、手取りの金額が扶養を外れる前よりも増えるでしょう?

社会保険は主に、公務員や教職員を対象にした共済、単一企業や同業社の従業員を対象とする健康保険組合、健康保険組合を持たない企業の従業員が加盟する全国健康保険協会(通称協会けんぽ)があります。

この中で、協会けんぽは加盟者数が最も多い社会保険です。

そこで、協会けんぽに介護保険料も負担する40歳以上の妻が加入するケースを、税の面で基礎控除と給与所得控除以外には所得控除がない条件で計算しました。

協会けんぽは都道府県毎に保険料率が決まるため、どの地域で働いているかによって負担額に多少の差がありますが、最も高い保険料率で計算すると、月額104,000円まで給料が上がれば、扶養に入っていたときの手取りの上限を超えることができます。年収では124万8千円です。

 

まとめると、社会保険の106万円の壁を超えて手取り収入を増やすには年収ベースで+19万2千円、130万円の壁の場合は、年収ベースで+38、9万円の上乗せが必要になります。

このように社会保険の扶養を外れると、年収で20~40万円ぐらい増やさないと家計の手取りが増えません。だから、扶養を外れるつもりなら最初からそのレベルの収入になる仕事を選ぶことをおすすめします。

お住いの地域でいい仕事があるかどうか、こちらのサイトで勤務時間・日数などの条件をしぼって検索すると、調べられます。

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ところで、現実に扶養を外れるときの影響は、社会保険の影響だけにとどまりません。もっと収入を増やさないと手取りが増えない可能性もあります。

そこで、扶養手当の支給や保育園利用料など行政サービスのコストなど、社会保険以外の要素も考慮して、扶養を外れるときの損益分岐点を計算してみました。おそらくあなたの想像以上に、壁は厚いと思います。

興味のある方は、こちらの記事もぜひお読み下さい。

関連記事>>>扶養を外れる損得 主婦の収入の壁とは何か 損益分岐点はいくらか

まとめ

いかがでしょうか。いろんな条件が絡んでくるので、なかなかわかりにくいお話だったかもしれません。説明も長くなるし。。。

扶養内で働く基準について、こちらの記事であらためてまとめてみました。ご興味がある方はぜひお読み下さい。

関連記事>>>パートは扶養内でいくらまで? 勤務時間は? 扶養手当の基準にも注意

扶養から外れることでどのような影響があるかを理解しておけば、働き方を選択するときに、ひとつの指針となるのではないかと思います。

この記事があなたの役に立つことを願っています。

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コメント

  1. うさぎだよ より:

    とてもわかりやすく、自分の不明だと思っていた点も最後にまとめてもらってスッキリです。また見にきます。
    ありがとうございます。

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