扶養家族がいるかいないか、扶養家族になるかならないかで、税金や医療保険、年金の保険料や負担額が変わってきます。
でも「扶養家族」の意味をあらためて聞かれると、正確に答えられる人は多くないのではないでしょうか。所得税・住民税の扶養と健康保険の扶養は似ているので、混同しやすいものでもあります。
ここでは扶養家族の意味するところを、社会保険と税金の両方で対比させながらみておきましょう。
扶養家族の意味は?
扶養とは、誰かの生活費を負担することをいいます。衣食住にかかるお金の面倒をみる、ということですね。
扶養家族は、その生活費を負担する対象の家族、を意味しています。
家族を扶養している人はそれだけ金銭的な負担が重くかかるので、負担の一部を社会的に支援する仕組みが日本にはあります。扶養家族のいる人には、医療保険、公的年金保険という社会保険の面と所得税、住民税の税金の面で、ともに優遇措置が用意されています。
扶養家族がいることが、優遇措置を受ける条件です。そこで社会保険でも税金でも、それぞれ「扶養家族」となる人の範囲を限定して、法律で決めています。
扶養についての話が理解しにくかったり混乱しがちなのは、それぞれの制度の「扶養家族」の範囲や条件が微妙にちがっているからです。
では「扶養家族」の範囲や条件は、どうなっているのでしょうか。
その話の前に、まずは日本の医療保険と公的年金保険の大枠を理解しておいた方がわかりやすいと思うので、医療保険制度と公的年金制度を、扶養家族のメリットを織り交ぜながら簡単に説明します。
日本は国民皆保険を導入していて、すべての国民が生まれた日から死ぬ日まで何かの医療保険に加入しています。医療保険制度は、だいたい下図のようなつくりになっています。
「健康保険被保険者」は、勤め先が健康保険と厚生年金保険の適用事業所になっている人のグループです。主に会社員、教員、公務員などがここに入ります。公務員の健康保険は「共済」とよばれます。組織に雇われている人だけが加入資格をもつことから健康保険と共済は「被用者保険」ともよばれ、保険料は被保険者と雇用主が折半して支払います。
「被扶養者」は、健康保険被保険者の「扶養家族」です。被扶養者は無償で健康保険を使うことができます。
「国民健康保険被保険者」は、「健康保険被保険者」でもその「被扶養者」でもない人です。ここに入るのは自営業の人とその家族や、無職の人などです。
年金制度は20歳以上60歳未満のすべての国民が国民年金保険の加入者となり、有職無職に関わらず保険料の納付義務があります。国民年金の被保険者は、概ね加入している医療保険制度に対応して、下図のように第1号から第3号被保険者の3通りに区分されています。
国民健康保険の被保険者は、国民年金の第1号被保険者になります。
被用者保険の被保険者は、厚生年金保険に加入します。厚生年金保険は図のように国民年金に上乗せされる年金で、保険料は国民年金より高くなりますが、将来の年金額も大きくなります。また保険料は健康保険と同様に、雇用主が半分を負担します。このグループは第2号被保険者になります。
健康保険の被扶養者になっていても、国民年金に加入義務のある学生さんなどは第1号被保険者となり保険料を支払います。しかし被扶養配偶者(妻または夫)だけは第3号被保険者となり、国民年金保険料の支払いを免除されます。
被用者保険の被保険者は、支払う保険料の半分が雇用者負担で、その扶養家族は無償で健康保険を使うことができ、被扶養配偶者にいたっては年金保険料まで免除されます。これが扶養家族のメリットです。
一方、国民健康保険の被保険者とその扶養家族には、このような扶養の優遇措置はいっさいありません。生まれたばかりの赤ちゃんでさえ被保険者のひとりであり、ひとり分の保険料が課される対象です。
このようにいまの社会保険の枠組みは、勤め人に手厚い制度で、国民健康保険の被保険者やその家族にはかなり不公平な仕組みになっています。このアンバランスを修正する方法は長年議論されていますが、なかなか妙案はないようです。
なお、税金面での扶養家族のメリットについては、こちらの記事にくわしく書きましたので、興味のある方はぜひお読み下さい。
関連記事>>>扶養控除をわかりやすく 金額の一覧表とか計算はいつからするかとか
扶養に入る条件
さて、扶養家族の具体的な範囲と条件です。
前述のように医療保険の扶養家族は「被扶養者」といい、税金の方は扶養家族を「扶養親族等」といいます。
被扶養者や扶養親族等に入る範囲は続柄で決められており、条件には収入要件があります。
具体的には下表のようになります。
医療保険 被扶養者 | 税金 扶養親族等 | |
続柄 | 主として被保険者に生計を維持されている後期高齢者以外の
同居することを条件として
| 納税者と生計を一にする
|
収入 |
|
|
収入要件は、医療保険の場合はこの先1年間の見通しを問われ、税金の場合は1月1日から12月31日の1年間の結果を問われます。
また、配偶者は税金の面では特別待遇があり、合計所得金額が38万円を超えても「配偶者特別控除」という枠組みで、引き続き控除のメリット(所得金額に応じて段階的に小さくなってはいく)を受けることができます。
扶養から外れるタイミング
医療保険の収入要件は、約40年前の厚生省(当時)の通達が根拠になっています。法定のルールではないため、何をもって年収130万円とするのかは医療保険を運用している保険者の解釈に委ねられていて、実際に保険者によって基準がことなります。
これは見通しを判断基準にしているため、でもあります。税金のように、すでに出た結果で判断するのではないため、さまざまな解釈が許されるともいえます。
そのため、医療保険では被扶養者の年収を確認する調査が行われます。収入基準に抵触しているのに被扶養者のままでいるのを防ぐことが目的です。あとから年収130万円超なのに被扶養者のままだったことがわかると、遡って医療費などの請求をされる可能性もあります。
なので月収が108,333円を超えたり、パートなどで年収130万円超になりそうな雇用契約を結んだ場合は、加入している医療保険の事務局に問い合わせて、扶養を外れることになるかどうか確認をするようにして下さい。
税金の場合は、1年が終わった結果で扶養に外れるかどうかが決まります。それでも、所得税を毎月の給与から源泉徴収している場合は、徴収額が扶養人数によって増減します。
最終的には年末調整で帳尻をあわせることになるので、税額に変わりはないのですが、所得が38万円を超える見通しがある場合は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤め先に提出することが求められています。
そのタイミングは「当初提出した申告書の記載内容に異動があった場合には、その異動の日後、最初に給与の支払を受ける日の前日まで」とされています。
まとめ
「扶養家族」とは、税法の「扶養親族等」、社会保険制度の「被扶養者」のことを意味しています。
いわゆる「扶養を外れる」というのは「扶養家族」ではなくなることですが、思いのほか金銭面での影響が大きいことがありますので、ご注意下さい。
主婦が扶養を外れるときに知っておいたほうがいい「収入の壁」については、こちらの記事に詳しく書いています。扶養を外れることを検討されるときには参考になると思うので、興味のある方はぜひお読み下さい。
関連記事>>>扶養を外れるとどうなる? 税金と社会保険にどんな影響があるかを解説します
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