緑茶はアルツハイマー病に効くのか?
アルツハイマー病には今のところ根本的な治療薬がないため、食品成分で予防や改善ができないか、という研究には期待が集まっています。
最新の研究では緑茶の効果がどのように評価されているのでしょうか?
緑茶とアルツハイマー病との関係
アルツハイマー病(AD)は、認知症の代表的な原因疾患です。ADになると、アミロイドβ(Aβ)というタンパク質が脳内に異常に溜まることが知られています。
マウスを使った動物実験では、緑茶の成分に効果があることが示されています。
2015年に米ミズーリ大学の研究チームは、ADの病態モデルマウスを使った実験で、ポリフェノールの一種で、緑茶に多く含まれているエピガロカテキンガレート(EGCG)を餌にまぜて与えたグループの行動が正常マウスと同じようになり、脳内に蓄積したAβが減少したことを確認しています。
2019年2月に発表された南カリフォルニア大学の研究チームの実験では、正常なマウスが抜け出せる迷路を脱出できなかったAD病態モデルマウスに、EGCGとフェルラ酸を餌にまぜて3ヶ月与え続けたところ、正常マウスと同じように迷路から抜け出せるようになりました。
日本では、2010年からはじまった「なかじまプロジェクト」が、緑茶とADとの関連性を示しています。
「なかじまプロジェクト」は石川県七尾市中島町の60歳以上の住人2千数百人を対象にして、緑茶、コーヒー、紅茶を飲む習慣と認知症との関係を調べた大規模な調査研究です。
この研究は「認知症・軽度認知障害の発症を予防するための糸口を発見する」という目的でおこなわれましたが、2016年の時点で、緑茶を飲む習慣と軽度認知障害発症リスク減少が関連するということがわかりました。
この成果から、研究チームは2016年7月にロスマリン酸プロジェクトを開始します。
ロスマリン酸プロジェクトは、レモンバームから抽出されるポリフェノールの一種であるロスマリン酸を継続的に摂取すると、認知症予防に効果があるかどうかを調べる現在も進行中の大規模な試験です。
2019年6月には、同じ研究チームのマウスを使った動物実験で、ロスマリン酸が脳内ドーパミンの産生活性化を通してAβを減らす仕組みが解明されました。
緑茶成分のEGCGやロスマリン酸といったポリフェノールは、アルツハイマー病の予防や改善に効果があると期待されていて、その効果を解明するための研究がすすめられています。
緑茶はアルツハイマーに効果がある?
ポリフェノールとアルツハイマー病との関係については、ここ15年ほどの間に多くの研究グループが論文を発表しています。
個々の論文は、実験や調査の設定条件や制約によって、必ずしも同じ結論にはなりません。そこで、同じテーマに沿った研究論文を総括して、どの説に科学的な信憑性があるのかを評価するシステマティックレビューという論文があります。
緑茶の認知症への効果についても、2019年にシステマティックレビューが公開されました。
その結論は「緑茶は認知症、アルツハイマー病、軽度認知症、認知障害のリスクを低減する可能性がある」というものでした。
参考 https://www.mdpi.com/2072-6643/11/5/1165
アミロイドβはアルツハイマー病の原因ではない?
最近になって、アルツハイマー病で観察されるアミロイドβの異常な脳内蓄積は、発症原因ではなく結果であるとの見方が注目されています。
これまでアルツハイマー病の治療薬は、脳内に蓄積するAβを除去することを目的に開発されています。EGCGのような食品成分も、Aβの除去機能を尺度として評価されてきました。
しかし、その方針で開発された治療薬が臨床現場ではあまり効果がなく、フランスでは保険適用外になるなど、治療法の発見はやや停滞しています。
認知症研究の世界的権威デール・ブレデセン博士は、Aβ凝集はダメージを受けた脳の防御反応の結果であり、ADの原因は脳にダメージを与える別の理由によるとしています。
そして、その考え方をもとに「リコード法」というアルツハイマー病の治療法を考案しました。ブレデセン博士は、アルツハイマー発症には36の異なる要因が関連していると考えていて、「リコード法」は36の要因を全部つぶしていくものです。
ブレデセン博士によると、アルツハイマー患者の脳は「36個の穴が空いた屋根」で、雨漏りを防ぐためには穴をすべて塞ぐ必要があります。
医薬品で塞げる穴はひとつかふたつが精々です。
「リコード法」は患者の食事、運動、睡眠といった生活習慣全般に関わる指針があって、包括的に対応するものです。
アメリカでは「リコード法」によって治療を受けた患者の9割で、症状の改善が見られたそうです。
まとめ
「リコード法」によって、アルツハイマー病や認知症は治せる病気、予防できる病気となりつつあります。
ひとつの食材や医薬品だけでなんとかしよう、というものではないようです。
緑茶にもAD予防や改善効果はありそうですが、生活全般でアルツハイマーになりにくい習慣を心がけていきたいものですね。
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