インフルエンザの予防接種を妊婦は受けられる?副作用や自閉症のこと

インフルエンザの予防接種を受けたのにインフルエンザに罹る人がいるし、予防接種しなくても罹らない人がいます。そのためインフルエンザの予防接種にどれだけ効果があるのかよくわからないし、お腹の赤ちゃんに悪い影響がないかも心配、という妊婦さんは少なくないでしょう。

インフルエンザの予防接種は、毎年流行る種類が違うから意味がないとか、むしろ予防接種は危険だという声も聞こえているかもしれません。

でも、妊婦さんはインフルエンザに罹ると重症化しやすいといわれています。

さて、予防接種は受けるべきなのでしょうか、受けないほうがいいのでしょうか?

そこで、参考になりそうな専門家、関係当局などの見解をまとめました。

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インフルエンザの予防接種を妊婦は受けられるの?

妊婦さんは高齢者とならんで、インフルエンザに罹ると重症化しやすいと考えられています。日本産科婦人科学会は、お産とお母さんと赤ちゃんの健康に関わる専門家ですが、妊婦さんのインフルエンザワクチン接種を推奨しています。

新型インフルエンザが猛威をふるった2009年に、日本産科婦人科学会は妊婦の予防接種を推奨する文書を公表しました。ちょっと長いのですが、以下に引用します。

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A(一般の方対象)

Q1: 妊娠している人は一般の妊娠していない人に比べて新型インフルエンザに感染した場合、症状が重くなるのでしょうか?
A1:妊婦は肺炎などを合併しやすく、基礎疾患がある方と同様に重症化しやすいことが明らかとなりました。諸外国での状況は妊婦の場合、妊娠週数が進むにつれ、より重症化しやすいことを示しています。2009年10月16日、WHO(世界保健機構)は、「妊娠28週以降の妊婦は特に重症化の危険が高い」、同10月30日には「妊婦はそうでない一般集団より集中治療室を必要とする確率が10倍高い」という声明を発表しました。このように、妊娠末期になるにつれ重症化しやすいので、ワクチン接種を受けるかどうかを決断する際や、発熱時に抗インフルエンザ薬(タミフル)を服用すべきか否かを決断する際の参考にして下さい。

Q2: 妊婦が新型インフルエンザワクチンを受けても大丈夫でしょうか?
A2: 安全かつ有効であると考えられています。(中略)ワクチンを受けることによる利益と損失(副作用など)を考えた場合、利益のほうがはるかに大きいと世界保健機構(WHO)も考えており、妊婦に対する新型インフルエンザワクチン接種を推奨しています。また、ワクチンを受けるということは「自分を守る」とともに、「まわりの人を守る」ことにつながります(妊娠中にワクチンを受けると出生した赤ちゃんも数ヶ月間インフルエンザになりにくいことが証明されています)。

平成21年5月19日(9月28日、11月9日改定)

ソースはこちらです。
日本産科婦人科学会「お知らせ」平成21年9月28日
日本産科婦人科学会「お知らせ」平成21年11月9日

上記の引用は新型インフルエンザに関するものでしたが、学会のウェブサイトをみると、季節性インフルエンザワクチンについても同様に推奨していることがわかります。

ただし、鶏卵鶏肉にアレルギーがある方は予防接種ができません。タミフルやリレンザという抗インフルエンザ薬の予防的な服用も含めて、インフルエンザにどのように対応するかを、かかりつけのお医者さんとよく相談しておくことが勧められています。

ちなみに抗インフルエンザ薬もワクチンと同様に、母体や胎児に重大な影響を及ぼす可能性はないと考えられています。

なお、2017-2018年のインフルエンザと予防接種については、こちらの記事で詳しく書いていますので、ぜひお読みください。

関連記事>>>インフルエンザワクチンが不足している!?2017年の流行状況と予防

インフルエンザの予防接種は妊婦に副作用があるの?

インフルエンザワクチンは、人の免疫反応を活性化してインフルエンザの発症や重症化を防ごうとするものです。体に免疫をつける反応以外の影響が出たとき、これを副反応といいます。一般に副作用と呼ばれているもののことですね。

妊婦さんでもそうでなくても、ワクチンの副反応が起こることがあります。つまり副作用がある可能性は、あります。

それでも日本産科婦人科学会が予防接種を推奨しているのは、副作用のデメリット以上にメリットがあると考えられているからです。

副反応として挙げられるのは、発熱、悪寒、頭痛、嘔吐、下痢、倦怠感、めまい、リンパ節の腫れなどで、予防接種を受けた人の5~10%程度の割合で、こうした症状がみられます。大半の人は、接種後2~3日で治まります。

まれに重篤な反応を示す人がいます。具体的には、全身にアレルギー症状が現れるアナフィラキシー、中枢神経に炎症が起こる急性散在性脳脊髄炎、短時間のうちに末梢神経が麻痺するギランバレー症候群、肝機能障害、喘息発作などです。

重篤な副反応を避けるため、明らかに発熱している人、重篤な急性疾患に罹っていることが明らかな人、予防接種や医薬品でアナフィラキシーを起こしたことがある人は、予防接種を受けることができません。

次のような人は、事前にお医者さんと相談することをおすすめします。

  • 心臓、腎臓、肝臓、血液の持病がある人
  • 風邪の症状がある人
  • 鶏卵、鶏肉、薬で皮膚の発疹や体の異常を感じたことがある人
  • 本人や近親者が過去に免疫異常を指摘されたことがある人
  • 気管支喘息のある人

インフルエンザの予防接種で自閉症の子ができるの?

インフルエンザワクチンには、チメロサールという水銀化合物が防腐剤として使われているものがあります。2004年3月に某大手テレビ局が、水銀と自閉症、発達障害に因果関係があるとする番組を放送しました。

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インフルエンザのワクチンが原因で自閉症になる、と心配する人がいます。また、そのような説を広めようとするグループもあります。

しかし、水銀は自閉症の原因ではない、とされています。厚生労働省は2009年10月に医薬品医療機器総合機構の調査報告書で、チメロサールと自閉症の因果関係を明確に否定しています。

医薬品医療機器総合機構平成21年10月18日第3回安全対策調査会 調査結果報告書

だからインフルエンザの予防接種が原因で、自閉症の子が生まれるとは考えられていません。

もともと自閉症水銀原因説は、1998年に権威あるアメリカの医学専門誌に「自閉症、発達障害の原因は水銀だ」とする論文が掲載されたことが発端です。

この論文自体は、実は内容におおいに問題があり、2004年3月に当該医学専門誌が「掲載したのは間違いだった」として取り消されましたが、英米では自閉症児を持つ親達が水銀を含む薬をつくった製薬会社を相手に訴訟を起こすなど、社会問題化しています。

日本では上記の論文取り消しを知ってか知らずが、同じ2004年3月に放送された先述の某テレビ局の報道特集が注目されました。水銀原因説を支持する医療関係者が存在していることも、チメロサール有害説の背景にはあります。

水俣病という水銀を原因とする公害病を経験していることもあってか、いまではチメロサール以外の防腐剤を使ったワクチン製造も行われています。ただ、製造量が限られているため、チメロサールフリーワクチンは妊婦さんや乳幼児が優先してつかえるように、厚生労働省など当局関係者もつとめてきました。

しかし、熊本大地震で製造拠点が打撃を受けてチメロサールフリーワクチンが作れなかった2016年、日本産科婦人科学会はわざわざ、チメロサール含有ワクチンを容認することを発表しました。

日本産科婦人科学会「お知らせ」2016年8月1日

チメロサール含有ワクチンを使っても、インフルエンザ予防効果を上回るようなリスクはない、と専門家の判断をはっきりと示したということです。

このように当局が神経質になっているのは、インフルエンザワクチンの予防接種は受けない方がいい、という根強い主張があるからなのでしょう。一部の医療関係者もそのように考えていますし、西洋医学に疑問を持つ人たちも同調しています。

インフルエンザワクチン不要論や予防接種反対派というような人たちが根拠にしているのは、「前橋リポート」とか「前橋スタディ」と呼ばれている、1987年に発表された前橋市医師会の調査報告書です。

前橋スタディは、1979年と1980年の2年にわたって、当時はふつうに行われていたインフルエンザワクチンの集団接種を中止した前橋市の医師会が、前橋市の小学生と、集団接種を実施した高崎市、桐生市、伊勢崎市の小学生のインフルエンザに罹った割合を比較した調査研究です。報告で述べられているのは、予防接種には効果がなかった、という結論です。

いまでは前橋スタディの調査方法や、結果の解析・解釈がかなり怪しいという評価が、一般的な医療関係者の考え方です。結論ありきのレポートだ、という声もあるようです。とくにインフルエンザの感染、発症をDNAレベルで評価できるようになった2000年代以降は、前橋スタディと正反対の結論を示す研究報告がいくつも出ています。

しかし、予防接種反対派の人たちは、最近の研究結果には触れません。存在を認めていないかのような態度をとっているそうです。あまり科学的な態度とはいえないようです。

まとめ

インフルエンザの予防接種は任意接種となっていて、いまの制度は受けるも受けないもご自分で判断して下さい、ということになっています。

予防接種不要論や反対派の人たちの話は、案外もっともらしく聞こえます。予防接種したのにインフルエンザに罹っちゃった、という経験をご本人がしていたり、身近にそういう人がいるとなおさらですね。予防接種を受けなくて平気な人も、一定の割合でいますし。

一方、現在インフルエンザの予防接種は、100%ではないけれどある程度の効果があると見方を、日本産科婦人科学会も支持していました。この専門家集団は、予防接種を推奨する立場です。

あなたはどちらを選びますか?

どちらを選ぶにしても、この記事でご紹介したことが役に立つことを願っています。

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